研究概要 |
本研究の目的は新たに見出された免疫担当細胞、NKT細胞の移植免疫に於ける役割をマウス同種膵島移植の実験系で明らかにしょうとするものである。臓器移植では移植前輸血(Donor specific transfusion ; DST)により同種拒絶反応が制御できると報告されているが、細胞移植である膵島移植ではその効果は未だ明らかにされていない。本研究ではDSTによる同種膵島拒絶反応の制御法を見出すとともに、NKT細胞の役割を明らかにしようと試みた。BALB/c、C57BL/6マウスをそれぞれドナー、レシピエントに使用した。移植3週間前にレシピエントにトナーと同系(BALB/c)の脾細胞を静注した(DST)。同時にCTLA4Ig(50μg.day 0,2,4,ip)を投与した。2週間後にストレプトゾトシンで糖尿病とし、トナー特異的又はthird party膵島を肝内に移植した。上記DSTにより、ドナー特異的同種膵島グラフトの拒絶反応を制御できることが判明した。NKT細胞欠損マウスではグラフトは拒絶された。NKT細胞の移入により、拒絶反応は制御された。以上の知見により、NKT細胞がDSTによる拒絶反応制御に必須の役割を担っていることが明らかになった。 グラフトが長期生着したレシピエントの移植部位:肝臓よりNKT細胞をFACS-sortingで取り出し、mRNAを抽出した。当初、RNA protection assayでlymphokines(IL-2,IL-4,IL-10,IL-12,TGF-bata, ICOS)発現の検索を試みたが得られる細胞数、mRNA量が少なく本実験には適さないことが判明した。現時点ではreal-time PCRで解析を行っている。NKT細胞のFACS解析で肝臓のNKT細胞にはInducible costimulator(ICOS)が発現し、抗ICOS抗体の投与によりグラフト生着延長が得られることが明らかになった。肝臓内NKT細胞は大部分がCD4陽性細胞であり、NKT細胞がCD4陽性T細胞のTh1,Th2の分化に関与していると考えられ、現在両者のcytokine profileを遺伝子レベルで比較検討している。 また、CTLA4-Igによる拒絶反応の制御について、マウス同種膵島移植、ラット同種肺移植の系で明らかにした。
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