研究概要 |
[目的]逆流性食道炎症例を対象とし,プロトンポンプ阻害薬と噴門形成術の胃内外分泌細胞動態に与える影響について検討した。 [対象と方法]逆流性食道炎にて腹腔鏡下噴門形成術20例(外科治療群)とプロトンポンプ阻害薬維持療法11例(薬物治療群)の治療前・後の自覚症状,内視鏡検査などの検査所見,血清ガストリン値,胃粘膜ガストリン細胞数,ヒスタミン含有細胞数ならびに壁細胞の電子顕微鏡による微細形態について検討した。 [成績]1)臨床症状について:腹腔鏡下Nissen噴門形成術15例,Toupet法5例の検討では,術前に存在した胸焼け,逆流感などの症状は消失したが,2例(10%)に嚥下困難が持続した。薬物治療例,11例中2例は,逆流症状,食道炎の残存が見られたが,維持療法が継続された。 2)国際食道疾患会議AFP分類による評価:腹腔鏡手術例20例中,食道裂孔ヘルニア(A)は18例(90%)に認められたが,術後全例消失した。食道炎(P)は,外科治療群では20例(100%),維持療法群9例(81.8%)で消失した。 3)胃内分泌・壁細胞の変化:血清ガストリン値は薬物治療群で有意に増加した。胃粘膜中のガストリン細胞数,ECL細胞数は増加傾向にあったが,有意の変化ではなかった。プロトンポンプ阻害薬内服中の胃粘膜の壁細胞の透過型電子顕微鏡による検討では,空胞化変成,管状小胞の減少,細胞基底膜の増加が一部の症例に見られた。 [結論]腹腔鏡下噴門形成術では胃内分泌の変化はなかったが,プロトンポンプ阻害薬の維持療法では血清ガストリン値の増加が見られた。内分泌細胞は,今回の検討期間では有意の変化を示していなかったが,増加傾向が見られ,より長期での検討が必要である。
|