研究概要 |
前立腺癌の培養細胞株であるPC-3において同定されたTIMP-1の新しい制御因子であるCRTFが胃癌の特に腹膜播種制御への関与について以下の結果を得た。まず、胃癌培養細胞であるMKN-45をはじめとする消化器癌培養細胞株においてもCRTFを介したTIMP-1産生経路の存在を明らかにした。また、胃癌培養細胞株MKN-45,MKN-28にTIMP-1遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターAdvCMV TIMP-1のin vitro感染実験を行い、TIMP-1の導入効果を明らかにし、MKN45を用いてinvasion assayを施行し、TIMP-1導入による浸潤抑制効果を認め、MKN-45より高頻度腹膜転移培養細胞株(MKN-45P)を樹立し、血清腹水を伴う胃癌腹膜播種モデルを作成した。MKN-45PをTIMP-1Adv感染群、Lac-zAdv感染群、Non-Virus(NV)群に分けヌードマウス腹腔内に投与した。TIMP-1Adv感染群は、Lac-zAdv感染群、NV群に比較し、結節数重量は有意に減少し、血性腹水は認められなかった。MKN-45およびMKN-45Pの培養上清中のIL-1β,IL-6,IL-8,IL-10,HGF, VEGF, TGFβ、MMP-2,MMP-9,TIMP-1の蛋白濃度をELISA法にて測定し、MKN-45PはMKN-45に比べ、IL-6,IL-8,MMP-2,VEGFの分泌が高度であることが判明し、ヒト大網由来の線維芽細胞との混合培養では、MKN-45において線維細胞との接触によるTIMP-1の上昇がMKN-45Pに比べ顕著であった。以上よりTIMP-1遺伝子導入が胃癌腹膜播種を抑制すると考えられ、その転写因子であるCRTFは腹膜播種抑制に関与する可能性が示唆された。
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