研究概要 |
方法: 細胞培養:Lewisラットの大動脈および子宮・卵管より大動脈(ASMC)および子宮平滑筋細胞(USMC)を採取,第3世代まで継代培養後,移植細胞生着確認のため,BrdUで平滑筋細胞を標識. 細胞移植:凍結傷害モデル作成3週後,ASMC, USMを瘢痕組織内中央に移植. 心機能評価:細胞移植5週後,Langendorff潅流. 左室リモデリングの評価:心機能測定後,computerized planimetry法. 組織学的評価:planimetry施行後,factor VIII免疫染色,H&E染色し,細胞移植部位のcapillary densityを計測. 細胞外マトリックス評価:ASMC群においてelatica van Gieson染色を行い,NIHイメージプログラムを用いて,エラスティンおよび総コラーゲン領域を算出. 血管増殖因子定量:slot blotting解析で,瘢痕組織内のVEGFを定量. 結果: 血管増殖因子定量:瘢痕組織内VEGF定量ではASMC群,USMC群は共にコントロール群に比して高値. 組織学的評価:ASMC群およびUSMC群共に移植5週後の瘢痕組織内でBrdU陽性細胞を多数認め,BrdU陽性内皮細胞あるいは平滑筋細胞が瘢痕組織内微少血管に認められた.細胞移植部位においてASMC群,USMC群は共にコントロール群より有意に多くのcapillary densityを認めた. 左室リモデリングの評価:瘢痕組織の壁厚はASMC群,USMC群は共にコントロール群より有意に厚く,瘢痕組織左室面積比はASMC群,USMC群は共にコントロール群より有意に小さかった. 細胞外マトリックス評価:エラスティン,総コラーゲン領域はASMC群がコントロール群より有意に大きかった. 心機能評価:systolic, developed pressureにおいてASMC群,USMC群は共にコントロール群より有意に高かった. 結論: 1.平滑筋細胞移植により,瘢痕組織内において血管増殖因子を分泌,angiogenesisを促進,さらに心収縮機能の改善を認めた. 2.移植平滑筋細胞は,少なくとも移植後5週間,瘢痕組織内で生存,失着.また,移植細胞が新たな血管形成に利用された可能性が示唆された. 3.移植平滑筋細胞は瘢痕組織の菲薄化及び拡張を予防.血管平滑筋細胞は瘢痕組織内にて細胞外マトリックスを発現し,瘢痕組織のリモデリングへの関与が示唆された.
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