研究概要 |
I.ラット脳へのHSP70遺伝子の導入実験:ラットを固定し、海馬あるいは線条体にプローブを挿入した。このプローブよりpBK-CMV-HSP70D DNAを20μg、注入し、CUY21により通電した。2μsの通電と98μsの非通電を10回、計1秒間の設定で、電圧は50V-150Vとした。電極間隔は1mmまたは2mm設定した。導入から1,3,7日後に還流固定し、脳冠状段切片を作成した。遺伝子導入は、β-galactosidase染色にて確認した。以下項目を変更し遺伝子導入の効率を検討した。(1)electroporationの電圧(50V,100V,80V,150V)、(2)DNA注入速度(10秒,1,5,10分)、(3)注入後通電までの時間(注入直後,1分後,10分後)、(4)使用ラットの週齢(4,8,12週齢)。しかし、いずれの場合にも偶発的に数個の神経細胞に遺伝子が導入されるのみで,十分な遺伝子意の導入を確立するまでには至らなかった。 II.培養ラットPC12細胞へのHSP70遺伝子の導入:培養PC12細胞に対しリボソーム法によりベクターのpBK-CMVとpBK-CMV-HSP70のtransfectionを行った。ベクター遺伝子導入の確認はβ-gal染色により行い、HSP70の確認は1抗体を用いたWestern blottingで行った。以上よりベクターであるpBK-CMVのみが発現している細胞系とHSP70蛋白が過剰発現している細胞系を確立することができた。そこで、wild群,ベクター発現細胞(pBK-CMV群),およびHSP70過剰発現細胞(HSP70群)の3種類のPC12細胞を用いてHSP70の細胞保護効果を検討した。付加刺激としては、過酸化水素水(H_2O_2)を用いた。培地内に50,100,150μMのH_2O_2を加えて培養を行い、MTTを用いて24時間の細胞生存率を測定したところ、いずれの濃度においてもHSP70群の生存率が有意に高く、HSP70がH_2O_2負荷に対する細胞保護効果を有することが示された。
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