研究概要 |
実験的胎便吸入症候群ラットでブタ肺由来サーファクタント(PMS)200mg/kgの投与は,PaO2を100mmHg以下から300mmHg前後に改善したが,効果は一過性であった.一方,デキストランを混合したPMSを投与するか,または肺洗浄をして同量のサーファクタントを投与すると,PaO2は300mmHg前後で維持されて有意差が認められた.塩酸ミルクによる実験的急性呼吸窮迫症候群ラットで,PMSを30分間吸入させると,PaO2は300mmHg前後に上昇したのち,100mmHg前後に低下した.一方,PMSの吸入に引き続き.デキストランを吸入させると,PaO2は治療開始後3時間まで,有意に高く維持された.以上からデキストランはサーファクタント補充の効果を有意に改善すると結論された. 金沢大学で固相合成法により作成したSP-C類似ペプチドをリン脂質に加えて作成した合成サーファクタントの最小表面張力は2mN/m前後で天然サーファクタントと有意差を認めなかった.しかし,最大表面張力は40mN/m前後で天然サーファクタント30mN/mに比べ有意に高かった.合成サーファクタントにデキストランを10mg/mlの濃度で加えるとPMSに比べ有意差を認めなかった.最大吸気圧25cmH20で人工呼吸をおこなったウサギ未熟胎仔で,合成サーファクタントは一回換気量をリン脂質のみの4ml/kgから10ml/kg後に有意に改善させた.デキストランを添加することにより換気量は15ml/kg後に有意に改善したが,天然サーファクタントを投与した動物のTV(25ml/kg前後)に比べると劣っていた.肺胞蛋白症患者由来のSP-Cの二量体が一回換気量を改善することがウサギ未熟胎仔実験で発見されたことから,SP-Cの二量体化が合成サーファクタントの活性を改善する可能性が示唆された.
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