研究概要 |
本研究の目的は,末梢血より採取したBリンパ球を用い,骨格筋リアノジン受容体(RYR1)を刺激する薬剤により細胞内カルシウム濃度の変化を捉えることで,悪性高熱症患者の素因を診断できるような方法を開発することである. 平成12年度には,まず正常人の末梢血より採取したBリンパ球がRYR1刺激薬剤により細胞内カルシウム濃度の変化が生じるかどうかについて調べた.本科学研究費補助金により,日本分光社製細胞内イオン測定装置(CAF-110)を購入した.正常ボランティアの末梢血約40mlを採取し,リンパ球を分離後MACS^<TM>によりCD19+細胞Bリンパ球を単離した.fura-2付加後,上記CAF-110のセル内へ107個の細胞をアプライした.RYR1の刺激薬である4-chloro-m-cresolおよびハロタンを加え,細胞内カルシウム濃度を測定した.正常ボランティアよりの試料を用い条件設定を行い,刺激薬添加により細胞内カルシウム濃度の上昇が捉えられた. 平成13年度,研究代表者前原康宏は,悪性高熱症素因が疑われる患者がより多く受診する施設へ研究機関を移動し,研究条件の設定に時間を要したため当初の予定より被検症例が増加せず,悪性高熱症素因患者と正常者のカルシウム動態の相違を有意に示す結果は未だ得られていない.しかし数例の検討で得られた結果として,RYR1刺激薬としてのハロタン付加により用量依存的に細胞内カルシウムの上昇率の増大が観察され,プロカイン・ニッケルの前投与によりその細胞内カルシウムの増加は抑制されたが,抑制の程度はプロカインの方が大きかったという内容を第24回悪性高熱研究会(2001年8月,山形市)において発表した. さらに本研究を継続して,末梢血採血からリンパ球を抽出し,悪性高熱症素因が診断できるスクリーニングシステムを確立させる.
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