研究概要 |
容量感受性クロライドチャネル(Clvol)は細胞容積,電気活動など多彩な細胞機能の調節に関与する。Clvolの抑制は臓器保護だけでなく臓器毒性ももたらす可能性がある。静脈麻酔薬の一つであるプロポフォールがClvolに及ぼす影響を人冠動脈平滑筋細胞を用いて検討した。クロライド感受性色素であるMEQを用いた蛍光色素法によりClvol測定を行った。低浸透圧溶液で細胞を刺激するとClvolが活性化する。この状態で陰イオンであるシアンを含む溶液で細胞を灌流すると,シアンがClvolを通過してMEQ蛍光を消退させる。MEQ消退率をClvol活性化の指標とした。浸透圧を300から60mOsm/kg H_2Oまで段階的に減少させると消退率は6.4±3.3から88.3±2.8%まで増加し、活性化が浸透圧依存性であることを示した。またクロライドチャネルのブロッカーであるNPPB(50,100,200μM)が210mOsm/kg H2Oの低浸透圧刺激後のMEQ消退率を用量依存性に有意に抑制する(23.9±6.1,13.5±7.9,7.9±4.0%)ことを示した。これらの結果はMEQ消退率がClvol活性を表すことを支持する。ついでプロポフオール(0.3,1,3,10,30,100μg/ml)がMEQ消退率を臨床濃度から用量依存性に有意に抑制する(23.6±4.8%,19.7±7.4%,18.2±3.5%,17.6±5.0%,15.8±3.1%,10.3±3.9%)ことを明らかにした。この結果はプロポフォールの臓器保護効果ならびに臓器毒性がClvol抑制を介する可能性を示唆するものである。この結果は異なった研究手技を用いて確かめられた。今後、他の麻酔薬、細胞(心筋細胞、脳細胞)を用いてさらに検討を行ってゆく予定である。
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