研究概要 |
痛覚閾値の個体差に起因する術中鎮痛状態・循環変動の個体差を検討し,あわせて,この痛覚閾値の個体差が生じる要因について基礎研究を行い以下のような結果を得た。 1.臨床研究 1)全身麻酔を受けた患者(108名)において術前の血圧,自律神経機能のパラメータと麻酔導入から手術終了までの循環変動量と,麻酔に使用した薬剤の必要量を「必要麻酔力」という新しい概念を使用し比較検討した(投稿準備中)。 (1)必要麻酔力は術前の収縮期,拡張期の血圧値との間に有意の相関を持たなかった。 (2)必要麻酔力は術前の動脈圧の周波数解析パラメータと有意の正の相関を認めた。 (3)麻酔導入中の平均血圧の変動量は術前血圧,心拍数,交感神経血管運動反射振幅との間に有意の相関を認めた。 (4)手術中の平均血圧の変動量は術前の心拍変動の低周波数/高周波数パワー比,動脈圧変動の低周波数パワー,高周波数パワーとの間に有意の相関を認めた。 2)Neurometer CPT/Cを用いた研究では特に痛覚と関連の深い5Hz,250Hzの知覚閾値は立位で有意に低下することを認め,血圧維持機構が末梢知覚閾値に影響していることを示唆した(既報)。 3)侵害受容の客観的指標として交感神経血管運動反射振幅が有用であることをIntubating laryngeal mask airwayを用いた気管挿管時の皮膚血流変化で示した(投稿中)。 2.動物実験 1)自然高血圧(SHR)ラット,Wister-Kyotoラット,Wisterラットではbaselineの痛覚閾値に違いを認めたが,足底筋剥離手術後の痛覚過敏の形成課程には大きな差がなかった(投稿準備中)。 2)Wisterラットの腎動脈直上で腹部大動脈を狭窄させレニン・アンギオテンシン系を賦活すると痛覚閾値は延長の傾向を示した。(研究継続中)
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