研究概要 |
前立腺癌のリンパ節転移モデルとしてヒト前立腺癌由来細胞LNCap, PC-3を用いて、intratesticular inoculation model, or thotopic inoculation modelを作製し、細胞間ならびにモデル間での転移様式の相違を検討した。LNCapにおいてはintratesticular modelのほうが高い造腫瘍能、リンパ節転移能を示した。その機序としてLNCaPではin vitroにおいて高濃度のDHTとの接触で血管新生因子の発現増強が認められ、またintratesticular modelにおいてもVEGFの発現増強が確認された。一方PC-3細胞では両モデルとも高い造腫瘍能、リンパ節転移能を示し、LNCaP細胞で認められたDHTによる血管新生因子の発現増強は認められなかった。しかしlymphangiogenesisに関与するとされるVEGF-Cの発現は非常に強く、高頻度のリンパ節転移成立に関わっている可能性が示唆された。つぎに種々のヒト前立腺癌由来細胞(LNCaP, PC-3,DU145,TsUPR)を用いてneurotrophic factorsの発現を検討した。NGFはすべての細胞株で発現が認められたのに対し、bFGFの発現はPC-3,DU145,TSUPRで、また,NT3の発現はPC-3,DU145で強い傾向にあった。次いでDU145,TSUPRを用いてorthotopic inoculation modelを作製し、マウス前立腺内の神経組織との関わりについて組織学的に検討したところDU145のみに神経組織への浸潤像が観察され、neurotrophic factorの発現と神経浸潤すなわち被膜外進展との関連が示唆された。一方、臨床検体を用いた免疫組織化学的検討では、こられのfactorのなかでNGFの強発現が神経組織周囲へ浸潤する癌細胞において確認された。臨床検体におけるリンパ節転移の有無とangiogenic factor (VEGF-C)の発現との間に有意な相関は認められなかった。以上の結果から前立腺癌の局所進展すなわち神経浸潤およびリンパ節転移に関わる因子として動物実験においていくつかの因子の関わりが想定された。しかしこれらの因子の臨床検体における関与は必ずしも有意とは言えず、今後の検討課題と考えられた。
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