研究概要 |
本研究においては、パーキンソン病による膀胱過活動モデル、前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞に伴う膀胱過活動モデルにおける中枢神経系での機序の解明を主に行った。 本来であれば遺伝子治療の可能性も検討すべきではあったが、中枢性膀胱過活動の機序の解明は難解で複雑であり、その解明に主眼をおいた。 1,前立腺肥大症などを想定した下部尿路閉塞モデル ラットの尿道に部分閉塞を行い、6週後に閉塞を解除すると排尿筋の肥厚および膀胱内圧検査上では無抑制膀胱収縮を認めるようになる。今回の研究では、中枢レベルにおいても神経伝達物質のタキキニン受容体およびα1アドレナリン受容体に変化が生じていることを示し、これらの拮抗薬が下部尿路閉塞に伴う膀胱過活動の治療に応用できる可能性を示唆した。 2,パーキンソン病などを想定した中枢性膀胱過活動モデル パーキンソン病の貴任病巣のひとつである中枢神経系の青斑核を1-DOPAを用いて薬理学的に刺激すると膀胱過活動がおこることが知られていたが、今回の研究では、大脳中枢レベルにおいてもタキキニン受容体に変化がおこっていることを示し、これらの拮抗薬がパーキンソン病に伴う膀胱過活動の治療に応用できる可能性を示唆した。また、膀胱過活動に関与する中枢のドーパミン受容体でも何が重要であるかを研究し、その結果、パーキンソン病でおこる膀胱過活動状態の原因としては中枢のD1受容体の働きが抑制されていないためではないか推測した。また、パーキンソン病治療で使用されるD2受容体刺激薬は膀胱過活動が促進することを示唆した。 3,その他の研究成果 中枢において、神経伝達物質のセロトニンの役割が近年注目されているが、セロトニン(5HT)によって誘発される膀胱過活動は、大脳中枢レベルにおいては、5HT1A,2,4受容体が排尿に関与している可能性があることを証明し、今後、これらの受容体に働く頻尿・尿失禁治療薬の可能性を示した。
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