研究概要 |
1.回腸導管モデルの作成;当初,ラットに対し両側回腸導管を作成し10匹の長期実験モデルを作る計画であった.51匹に手術を施行したが,多くの例で自らの歯でストーマを傷つけ出血死し,モデルとして完成したのは5匹であった.以上の結果からラットでの長期実験モデルとしての回腸導管作成は困難と判断し,計画を変更し下記実験を行った. 2.急性期実験;対象:雄Wistar rat(300〜500g)を用い回腸導管群6匹,コントロール群6匹に対し実験を行った.方法:自作のアダプターを用い,遊離した10cmの回腸と膀胱を接続し回腸経由で採尿する回腸導管モデルとし,コントロール群は膀胱に回腸を接続せず直接膀胱から採尿した.シスプラチン1mg/kgを尾静脈より投与.投与後20分で採血を行い,下大静脈(IVC),門脈(PV)内のシスプラチン濃度と同時に蓄尿した尿量・尿中濃度・尿中排泄量を測定.結果:体重・尿量・尿中濃度・尿中排泄量・尿中排泄率には差を認めなかった(p=0.44,p=0.70,p=0.53,p=0.92,p=0.98).両群間でIVC・PV中のシスプラチン濃度に明らかな差は認めなかったが,IVC/PV比として比較したところ回腸導管群で濃度差が大きかった(p=0.04).考察:回腸導管群で濃度差が大きかった原因は,水の再吸収が多かった可能性とシスプラチン尿中濃度が血中濃度を上回る時間が少なく,受動輸送が基本であるシスプラチンの再吸収が少なかった可能性の二つが考えられる.今回の実験で回腸導管内を通る尿中のシスプラチンがある程度の修飾を受けており,体内動態に影響を与えていることが観察された.これが長期間の観察でどのように変化するのか,また抗腫瘍効果として影響を与えうるのかという点については今後も検討を続けるべき課題であると考えられる.
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