研究概要 |
本研究では,臍帯血単核細胞から効率的に破骨細胞を分化・誘導させる培養条件について検討すること,E2(Estradiol)が破骨細胞の分化・誘導に及ぼす影響について検討すること,および培養破骨細胞のTNFα産生能とエストロゲン受容体遺伝子(ER)多型との関連について検討することを目的とした. 1)臍帯血単核細胞から効率的に破骨細胞を分化・誘導する培養条件の検討 10%牛胎児血清(FBS),20%馬血清(HS),2%BSA添加培養液に,M-CSF, IL-4,活性型Vitamin D(VD),破骨細胞分化因子(ODF)を添加して臍帯血単核細胞を培養し,破骨細胞が分化・誘導される条件について検討した.形態学的手法による判定(多核で細胞質内の酒石酸抵抗性酸性phosphatase活性陽性細胞の出現頻度)では,FBS+M-CSF+VD, HS+M-CSF+IL-4,BSA+M-CSF+VD)の組み合わせで高率に破骨細胞が誘導された.生化学的手法による判定(calcitonin添加時のcAMP産生能)では,H S+M-CSF+VD, BSA+M-CSF+IL-4の組み合わせが好条件だった.骨吸収能による判定(BioCoat Osteologic slide 上の吸収窩の面積比)では,HS+M-CSF+VDが好条件だった. 2)E2が破骨細胞の分化・誘導に及ぼす影響についての検討 血清中のE2の影響を排除するためBSA+M-CSF+IL-4培地を用い,cAMP産生を指標として破骨細胞への分化・誘導に対するE2添加の影響を調べた結果,明らかなcAMP産生の変化は認められなかった. 3)培養破骨細胞のTNFα産生能とER多型との関連についての検討 BSA+M-CSF+IL-4培地を用いE2+/-の条件下で破骨細胞を分化・誘導させた.LPS刺激後,E2(-)のTNFα産生に対するE2(+)の産生を比率で算出して臍帯血ゲノムDNAのER遺伝子多型との関連について検討した結果,その産生比はPP型:0.596±0.06,Pp型:1.06±0.06,pp型:1.44±0.12であり,培養破骨細胞のE2(+)時のTNFα産生能はER多型によって異なる可能性が示された.
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