研究概要 |
抗腫瘍免疫に於いて最も重要な事は,腫瘍にとっての真に特異的な抗原(腫瘍特異的移植抗原TSTA)を見い出す事である。従来云われてきたTSTAとは,そのTSTAのペプチドが,その腫瘍の主要組織適合抗原(MHC)に提示され,細胞障害性T細胞(CTL)によって認識される。1つの腫瘍では,複数のTSTAが見い出される。 我々は,ここ10年CTLの特異性に関する研究を行い,ある条件下では,CTLが刺激細胞上のある特異的な抗原(X-染色体遺伝子産物)を認識する事を見い出した。CTLを誘導するためのリンパ球混合培養に骨髄細胞をアクセサリー細胞として添加すると,誘導されたCTLは刺激細胞上のアロのMHCと同時に,その細胞上のX-染色体遺伝子産物を認識する。すなわち,CTLはdualなreceptorをもち,2つの抗原を別々に認識する事を見い出した。この条件下で誘導されるCTLは,アロのMHCに拘束されると同時にアロのX-染色体遺伝子産物にも拘束された認識を示す。この事より,この培養条件下ではX-染色体遺伝子産物は免疫応答調節を担い,MHCに匹敵する重要な抗原と考えられる。 そこで今回,我々はX-染色体遺伝子産物に対する特異的なCTLを誘導するための最適の条件を検討し,将来に於いて,それを抗腫瘍CTLの誘導に応用する。即ち,リンパ球上のX-染色体遺伝子産物に匹敵する抗原が,腫瘍細胞上に存在するか同定を試みるための方法を確立しようとする。 今回の研究の成果として,X-染色体遺伝子産物に特異的なCTL誘導のための至適な条件を見い出した。
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