研究概要 |
頭頚部癌細胞株への血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)の遺伝子導入によるin vitro及びin vivoでの効果を検討した.更にこの系への血管新生阻害剤の影響を検討した. 1.樹立細胞株へのVEGF遺伝子導入 細胞株は,当科で樹立しVEGFの発現が認められない上顎扁平上皮癌細胞株OKK-LNを使用した.OKK-LNにVEGF発現ベクターを導入し,VEGF産生腫瘍OKK-LN/pCIneo-VEGFを樹立した.この細胞株はcontrolとしたpCIneo plasmidのみをtransfectしたOKK-LN/pCIneoに比較し明らかなVEGF発現が認められた. 2.ヌードマウスへの移植によるVEGFの腫瘍増殖の検討 6週齢Balb/c nu/nuマウスの右側腹部に両細胞を皮下注射することにより移植した.移植35日後に腫瘍体積はVEGF transfect群(OKK-LN/pCIneo-VEGF; n=6)では,control群(OKK-LN/pCIneo; n=8)に比較して約3倍の有意な増大を認めた.生存日数の検討ではVEGFtransfect群はcontrol群より生存日数が平均9日間短縮した. 3.血管新生抑制因子による腫瘍増殖抑制の検討 VEGF, bFGFなどの血管新生増殖因子によって誘導される血管新生を血管新生因子非特異的に阻害するとされるFumagilin誘導体であるTNP-470によるvEGF産生腫瘍の増殖に対する影響を検討した.OKK-LN/pCIneo-VEGFをヌードマウスに移植する際に同時にTNP-470を投与した.投与群(n=5)は非投与群(n=5)に比較して35日後,42日後で腫瘍体積は約1/3となり有意な抑制が認められた.また,生存日数も有意な延長がが認められた. 以上より,VEGFの産生は腫瘍増殖を促進し生命予後に影響を与え悪性度に寄与することが推測された.
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