研究概要 |
頭頸部癌において実際にIL-6の産生が認められるか否かを確認した。研究の過程において高濃度IL-6・G-CSF産生腫瘍細胞株の樹立をおこなった。多くの頭頸部癌細胞株培養液中にIL-6のみならずG-CSFの活性が認められた。また培養液中のIL-6およびG-CSFの浪度が高い細胞株がinvasion assayでより高い浸潤能を示した。次に癌細胞培養上清中に癌細胞の浸潤に関与するMMP-2,MMP-9の活性が認められるか否かを検討した。癌細胞培養液上清中のIL-6,G-CSFが高濃度を示した細胞株の培養液中のみMMP-2,MMP-9は認められ,その他の癌細胞株の培養上清中ではMMP-2,MMP-9は感度以下であった。培養液中にMMP-2,MMP-9が認められた癌細胞株では培養液にIL-6を添加するとMMP-2,MMP-9が増加したが、その他の癌細胞株では培養液にIL-6を添加しても培養液中のMMP-2,MMP-9は感度以下であり、変化を認めなかった。 癌細胞自身のIL-6レセプターの発現をRT-PCR法を用いて確認した。癌細胞培養上清中にIL-6を添加すると濃度依存性に癌細胞のIL-6レセプターの発現は抑制された。またIL-6レセプターからのシグナルは癌細胞の増殖を抑制し癌細胞の浸潤を亢進する作用があることを確認した。 頭頸部癌細胞に対する遺伝子導入効率は非常に悪い現実が存在する。そのため今後の研究における遺伝子導入効率を高める方法の確立を検討した。LacZ遺伝子または単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子を組込んだAAVベクター(AAVLacZ,AAVtk)を作製し,これらをヒト喉頭癌由来のHEp-2細胞及びHeLa細胞に感染させ,γ線照射の有無によるガンシクロビル(GCV)に対する感受性の差を検討した。更に,HEp-2細胞をヌードマウス皮下に移植し形成した腫瘍にAAVベクターを感染させ,γ線照射の有無による腫瘍内での導入遺伝子の発現及びGCVに対する感受性の差を検討した。その結果AAVtk/GCV単独でも癌細胞に対する十分な殺細胞効果が得られたが、γ線はこの効果を最高で約15倍まで増強した。また腫瘍内でのAAVLacZの発現はγ線で約3倍に増強された。腫瘍増殖はAAVtk/GCV単独でも低下したが、γ線の併用で30日間完全に抑制された。
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