研究概要 |
本研究の目的は、ロイコトリエンD_4(LTD_4)および血小板活性化因子(PAF)の気道粘膜上皮細胞に対する遅発性障害とその機序を生化学的に検討し解明の糸口を得ることにある。 研究1.アレルギー性鼻炎患者の鼻汁の検討:アレルギー性鼻炎患者の鼻汁のアルカリホスファターゼ活性(ALP)、乳酸脱水素酵素(LDH)、一酸化窒素(NO)、nitrotyrosine(NT)、tyrosine(T)、好酸球顆粒蛋白ECPを測定した。また、鼻洗浄液と血清中の尿素を測定して、鼻汁に換算して検討した。結果:有意の相関を示したのは,1)ALPとLDH、2)ECPとLDH,3)ECPとAPL,4)N0とNT,5)NTとALP,有意の相関を示さなかったのは,6)NTとLDH,7)ECPとNTであった。以上の結果から、以下のことが示唆された。(1)鼻アレルギー患者の鼻腔粘膜の細胞障害が生じていること。(2)好酸球による鼻粘膜細胞の細胞膜の傷害と原形質からのLDHの逸脱。(3)N0とO2との反応系による細胞膜傷害。(4)細胞膜傷害によるALPと細胞の原形質からのLDHの逸脱の度合いが異なる可能性。(5)N0とO2との反応系による細胞膜傷害機序が好酸球顆粒蛋白による細胞傷害機序と異なる独立した機序であること。 研究2.LTD_4とPAFの暴露実験:手術時に得られた鼻粘膜片に10^<-7M>、10^<-8M>LTD_4 とPAFをそれぞれ暴露して、培養液中のLDH、ALP、NO、NTを経時的に測定した。結果:(1)培養液中のLDH、ALP、NO、NTは経時的に増加の傾向を示した。(2)ロイコトリエン受容体拮抗薬PranlukastによってLTD_4暴露によるこれらの現象は抑制された。(3)鼻粘膜におけるNTを抗NT抗体を用いて染色すると、controlと比較して明らかに微慢性に鼻粘膜が染色された。(4)LTD_4とPAFを暴露24時間後にヒト培養気管粘膜上皮細胞の培養液中のNTは増加した。以上から患者の鼻洗浄中に検出されるNTは気道粘膜上皮細胞および上皮細胞以外にもその由来を求めるべきと考えられた。今後、脂質メデイエーターによる細胞障害性の機序解明のために鼻粘膜のキサンチンオキシターゼ(XOD)やNO産生酵素((NOS)のmRNAレベルでの検討が望まれる。
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