研究概要 |
[目的]眼内血管新生におけるmatrix metalloproteinase(MMP)の重要性を解明するため,MMPを内因的に阻害したマウスにおいて種々の眼内血管新生モデルを作成し,血管新生が抑制されるか検討した。 [方法]wild-typeマウス,MMP-2およびMMP-9ノックアウトマウスを用い,網膜新生血管モデルと脈絡膜新生血管モデルを作成した。網膜新生血管モデルは各群それぞれ7匹の生後7日の幼弱マウスを5日間75%の高濃度酸素下で飼育し,つぎに5日間room airで飼育し,生後17日目に眼球摘出した。一方,脈絡膜新生血管モデルは各群それぞれ10匹の生後6〜8週の成熟マウスの視神経乳頭周囲にレーザー光凝固を施行し,照射2週間後に眼球摘出した。眼球は10μmの凍結切片とし,レクチンにて血管内皮細胞を染色後,画像解析により新生血管量を比較検討した。 [結果]網膜血管新生についてはwild-typeに比べ,MMP-2およびMMP-9ノックアウトマウスで有意な抑制がみられた(血管内皮細胞面積はそれぞれ21.3±3.2mm^2×10^<-3>,11.5±2.1mm^2×10^<-3>,13.4±2.7mm^2×10<-3>,P<0.05,Mann-Whitney U test)。一方,脈絡膜血管新生に関しては新生血管の面積に各群間で有意差はみられなかった(それぞれwild type:6.23±1.1mm^2×10^<-2>, MMP-2ノックアウトマウス:5.98±1.0mm^2×10^<-2>, MMP-9ノックアウトマウス5.90±0.5mm^2×10^<-2>)。 [考察および結論]MMPの内因的阻害により網膜血管新生が抑制されたことから,MMPは網膜血管新生の発生,進展において重要な役割を有することが示唆された。一方脈絡膜血管新生は抑制されなかったことから,同じ眼内血管新生でも由来する血管により血管新生の分子機構は異なっている可能性が示唆された。
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