研究概要 |
1.近視患者が,大きな調節ラグを伴っているかどうか明らかにする。43例の成人を近視群と正視群の2群に分類した。複数の調節視標に対する調節反応を他覚的に測定した。両眼開放下では,各調節視標に対する調節ラグは,近視群で有意に大きかった。しかし,調節の刺激-反応連関における回帰直線の傾斜には有意差はみられなかった。さらに両群とも,両眼開放下での回帰直線の傾斜は,片眼遮蔽下の傾斜に比べて急峻であった。成人の近視症例では,調節機能の低下はみられず,眼鏡の頂間距離や意図的低矯正により,日常的に生ずる調節ラグは正視例に比較してむしろ小さいといえる。 2.調節と輻湊の相互干渉モデルは,眼位ずれを代償する輻湊のデマンドが大きな調節ラグを引き起こすことを予測している。筆者らは,この予測を,斜位患者を対象として試験した。被検者109例で,外斜位と内斜位,正常者を含む。2.5Dの調節視標に対する調節反応を,両眼開放下(BFC)と片眼遮蔽下(MOC)で他覚的に測定し,これらを比較した。BFCでの調節誤差は,調節ラグで1.8D,調節リードで1.6Dに達した。BFCとMOC間の調節反応の差と斜位角の間には,線形関係がみられた。BFCにおける調節ラグの大きさは,内斜位や未矯正の遠視と相関がみられ,相関の程度はAC/A比やCA/C比により異なった。斜位患者では,眼位ずれが調節反応に影響しており,症例によっては,両眼単一融像とひきかえに調節障害が生じていると考えられる。
|