研究概要 |
神経芽細胞腫凍結検体241検体からRNA,蛋白を抽出し,ノザンハイブリダイゼーション,蛍光サーマルサイクラーを用いたRT-PCR等にてテロメア結合蛋白の発現を検討したところ,hTRF1発現量はテロメア長と正の相関を認めたが、hTRF2,Tankylase, TIN2,hRaplには差はなかった。凍結標本を,抗hTRF1,hTRF2抗体で染色したところ,サザン法にてテロメア長の長かった腫瘍のシグナルは強く,hTRF1,hTRF2の局在とほぼ一致した。さらに,TUNNEL法とDNA断片化から,腫瘍のアポトーシスを検討すると,テロメラーゼ活性がないか低い腫瘍は,アポトーシスに向かう腫瘍細胞の混在が確認され,全腫瘍細胞に対し5-54%を占めており,この比率はテロメア長と逆相関した.一方,テロメラーゼ活性の高い腫瘍はアポトーシス細胞の占める割合が5%以下がほとんどであった. 神経芽腫の細胞株5株で検討した結果、5株ともテロメラーゼ活性は高く、これらのうち4株はテロメア長が短縮し、テロメア結合蛋白の中でhTRF1発現がテロメア長と相関した。これらの細胞を、抗hTRF1抗体,抗hTRF2抗体で処理したところ、細胞増殖能は変化がなく、テロメア長が短縮した細胞株が3株存在し、テロメラーゼ活性には変化がなかった。また、TUNNEL法とDNA断片化からアポトーシスの誘導を検索したが、有意なアポトーシスの誘導効果は得られなかった。そこで、テロメラーゼの必須部分であるhTRを切断するリボザイムを投与すると、5株中2株にテロメラーゼ活性が抑制され、細胞死がみられた。TUNNEL法とDNA断片化から,アポトーシスに向かう腫瘍細胞の混在が確認された。 以上から,テロメラーゼの活性の抑制により、神経芽腫はアポトーシスへ向かうシグナルが働いていることが示唆された。
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