研究概要 |
悪性腫瘍は血管新生による腫瘍の増殖に関わる血管新生因子を分泌していると考えられている。そして,これまで様々な血管新生因子が,多くの悪性腫瘍の増殖,転移に関与していることが明らかになってきた。そこで我々は神経芽腫の増殖・進展においてどんな血管新生因子が関与しているのか,また,それによってどんな因子が神経芽腫に対する抗血管新生療法のターゲットを検索することを目的として、以下の研究を行った。初めに、神経芽腫組織におけるVEGF-Aの発現について、ノーザンブロット法を用いて検討し、神経芽腫においてVEGF-Aが発現していることを確認した。次に神経芽腫の生物学的特性と血管新生因子の発現量の関係について詳しく検討することにした。病期の異なる神経芽腫の切除腫瘍28検体(Stage1,2,3,4がそれぞれ3,8,8,9例)において、4つの血管新生因子,VEGF-A, VEGF-C, bFGF, PD-ECGF/TPの神経芽腫腫瘍組織における発現について定量RT-PCR法を用いて検討した。その結果、bFGF, PD, ECGF/TPの神経芽腫腫瘍における発現はStage,年齢,原発部位,MYCN遺伝子のコピー数,リンパ節転移の有無による差は認められなかった。VEGF-Cの発現はStageによる差はなく,また,リンパ節転移の程度にも関係なく発現していたが,MYCN遺伝子の増幅症例に発現が高いことが示唆された。VEGF-AはStage-1の症例で他のStageに比べ統計学的に有意に高発現が観察された。本研究において、神経芽腫におけるVEGF-Aの発現はStage4症例で有意に高発現していることが判明した。VEGF-Aは神経芽腫のdisseminationに関与しており,進行神経芽腫の抗血管新生疲法のターゲットになりうる可能性が示唆された。
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