研究概要 |
1.LPS投与後の辺縁歯周組織におけるケモカイン発現の検討:(1)JE細胞ではLPS投与1時間から3日にかけてMIP-2の発現が誘導され,LPSの惹起する好中球遊走にJE細胞の産生するMIP-2の関与が明らかとなった.(3)LPS投与1〜2日後,歯槽骨骨頂部領域の骨芽細胞や骨細胞にみられるMCP-1発現増強は,破骨細胞前駆細胞の局所への動員を介し,LPS投与3日後の破骨細胞増加を引き起こすと推察された.2.各種濃度のMIP-2局所投与が辺縁歯周組織に及ぼす影響:(1)投与3時間後:0.05mg/ml投与例ではJE直下結合組織の血管拡張が観察され,周囲に好中球の浸潤が目立つ症例もあった.0.5mg/ml投与例では拡張した血管周囲を中心に好中球数の明らかな増加がみられた.MIP-2の濃度依存的にJE内およびJE直下結合組織における好中球数が増加するとともに,5,50mg/ml高濃度投与例では,破骨細胞数の増加も観察された.(2)投与3日後:いずれの濃度でもJE内およびJE直下結合組織に,多数の好中球浸潤が観察されるようになり,低濃度投与例でも破骨細胞性骨吸収を示すものが現れた.3.抗MIP-2抗体腹腔内前投与の影響:抗MIP-2抗体腹腔内投与はLPS投与後3日目の好中球浸潤ばかりでなく破骨細胞数の増加も有意に抑制した.特異抗体によるMIP-2の中和は,歯周炎病巣への好中球浸潤の抑制を介して,炎症巣でのサイトカインネットワークに影響を及ぼすことによって破骨細胞性骨吸収因子の誘導を抑え,間接的に3日後の破骨細胞の増加を抑制したと考える.よって,ヒト歯周炎病巣におけるIL-8などのCXC-ケモカインの抑制は,局所への好中球動員を抑えるばかりでなく,続いて起こる歯周組織破壊にも抑制的に働くと推察され,CXC-ケモカインをターゲットとした歯周病治療の可能性が示唆された.
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