研究概要 |
骨組織の治癒過程を解明することは骨の再生を理解する上で重要であると考えた。TGF-β super familyは骨芽細胞の初期分化や細胞外マトリックスを調節し骨の形成において中心的な役割をになっている。 そこで,骨再生過程におけるTGF-βリガンド,BMPリガンド,シグナル伝達物質およびそのreceptorの局在を観察したいと考え、BMPおよびTGF-βのリガンドおよびレセプターの局在と遺伝子発現を検索した。 BMPおよびTGF-bのリガンドおよびレセプターの遺伝子発現は,ほぼ同様の局在を示し、骨折後1日目では凝血組織周囲の結合組織のfibroblast-like cellおよび筋組織の結合組織細胞に観察され,この免疫反応は骨折後2日目ではより強かった。骨折後3日目では線維化が開始され,線維芽細胞の免疫反応は最も強かった。骨折後4日目以後では,軟骨形成とともに軟骨芽細胞,増殖期および休止期軟骨細胞に認められたが,肥大期軟骨細胞には免疫反応は認められなかった。また骨吸収部では破骨細胞にも強い遺伝子発現が観察された。骨折後7〜14日目では骨形成が盛んに行われ,骨芽細胞は強い遺伝子発現を示したが,ほぼ骨性治癒が得られた骨折後21日目以後では,細胞成分はほとんど遺伝子発現を示さなかった。また,2 color FISH法ではBMPおよびTGF-βのリガンドおよびレセプターの遺伝子発現は一致していた。 以上のことから,BMPおよびTGF-βは骨折治癒過程においてreceptorを介し,autocrine、paracrineに作用し、骨芽細胞や軟骨細胞の初期分化を促進するのみならず,破骨細胞を刺激して,骨吸収においても重要な役割を果たすものと考えられた。
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