研究概要 |
老人性骨粗鬆症は骨芽細胞から脂肪細胞への分化のシフトが原因であると考えられている。そこで、本研究においてはマウス前骨芽細胞とヒト間葉系幹細胞を用いて、脂肪細胞分化に影響を与える物質の探索とともに、その機序の解明およびこの脂肪細胞分化が破骨細胞分化、骨芽細胞分化に与える影響について検討した。両細胞とも、脂肪細胞分化決定遺伝子のPPARγのリガンドである15-deoxyΔ12,14-PGJ2,トログリタゾンの添加に伴い、PPARγの活性上昇を介して脂肪細胞分化を促進していることが明らかとなった。一方、脂肪細胞分化抑制物質の探索ではレチノイン酸、IL-11ではPPARγの発現抑制を介して脂肪細胞分化を抑制したが、ビタミンK2ではCBP/αの発現抑制が脂肪細胞分化抑制の機序であることが明らかとなった。次にこれら脂肪細胞分化が破骨細胞分化、骨芽細胞分化に影響を与える可能性に関し破骨細胞分化支持能力を調べたところ、脂肪細胞分化に伴い、ODFの発現は低下し、破骨細胞数の低下が認められた。一方、骨芽細胞分化に関し、これら薬剤の効果を調べたところ、cbfa-1の発現、vonKossa染色とも影響を受けなかった。さらに、この効果をin vivoで証明するため、マトリゲルにヒト間葉系幹細胞をBMP-2,ビタミンK2などとともに添加し、免疫不全マウスの皮下に移植し、その各種分化に対する影響を調べたところ、BMP-2では脂肪細胞分化、骨芽細胞分化を促進したが、ビタミンK2の同時添加は脂肪細胞分化を抑制したものの骨芽細胞分化を促進しなかった。以上の結果より、間葉系幹細胞の脂肪細胞分化は骨形成の微小環境を悪化させることはあっても、骨芽細胞形成に対し負の調節は行っていないことが示唆された。以上の結果より、老人性骨粗霧症の予防は脂肪細胞分化の抑制ではなく骨芽細胞分化促進に焦点を当てるべきであることが明らかとなった。
|