研究課題
基盤研究(C)
近年、骨細胞が機械的刺激に反応するメカノセンサーであることが報告されているが、その受容体および情報伝達経路に関しては殆どが不明である。そこで今回、メカニカルストレス情報伝達経路の一環として、骨細胞の膜イオン輸送系への作用を検討した。まず、Whole-cell patch clamp法を用い、MSによるイオンチャネル調節機構への関与を検討した。実験には新生児ラット頭蓋骨より採集した骨細胞を用い、MSには外液の低浸透圧溶液刺激により生じる細胞膜伸展作用を用いた。低浸透圧刺激により細胞膨張と同期して外向整流性Cl^-電流が活性化された。このCl^-電流はDIDS・NPPB感受性で、陰イオン透過比はI^->Br^->Cl^->Gluconate^-であった。また、プロッカーによりCl^-電流を抑制した状態で、低浸透圧刺激を与えるとCl^-電流以外の外向整流性K^+電流が活性化された。次に、骨細胞においてMSにより活性化されるCl^-チャネルが、CLC型Cl^-チャネルの内、どのタイプのCl^-チャネルなのかを免疫染色法や分子生物学的手法により検討した。その結果、骨細胞にはCLC2及びCLC3型Cl^-チャネルが共に発現していた。全RNAを調整しCLC型Cl^-チャネルの内CLC2とCLC3遺伝子の発現量(mRNA)を定量的に検討するためにDNAテンプレート(λDNA)を用いて各々のcompetitorを作成し、Competitive PCRにより発現量を比較した。その結果、CLC3遺伝子の発現量はCLC2に比較して圧倒的に多いことが明らかになった。以上より、骨細胞にはメカニカルストレス(MS)により活性化されるCl^-チャネルが存在し、このチャネル自身がMS受容器として働いていることが明らかとなった。この活性化されるCl^-電流の外向き整流性や陰イオン透過性および薬理学的性質が、真核細胞においてMSによる細胞容積調節に関与すると報告されているCLC3型Cl^-チャネルと類似していることや、骨細胞にはCLC3型Cl^-チャネルが有意に発現していることより、CLC3型Cl^-チャネルが骨細胞のMS受容器として重要な役割を持つ可能性が示唆された
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Jpn J Physiol 52(suppl)
Jpn J Physiol(suppl) 52
J Bone Miner Res 15(suppl)
J Bone Miner Res(suppl) 15