研究概要 |
本研究は,咬合をより客観的に捉えるための評価基準をつくることを最終目標とし,以下の成果を得た. 1.購入したワークステーションを接続することにより現有の顎機能診断システムのデータ処理能力を高めることができた. 2.臼歯部咬合小面を面の向く内外的方向からA, B, Cに,さらにそれぞれを前後的方向からMとDの計6種類(AM, AD, BM, BD, CM, CD)に分類した. 3.対顎咬合面との距離および咀嚼運動路の入射角などの咬合接触状態を定量的に評価することができるパラメータを設定して,健常者の咀嚼時の6自由度顎運動と歯列の三次元形態データを結びつけて機能時の動的咬合接触状態を解析し以下の結果を得た. (1)咀嚼第4相においてAMおよびCM咬合小面と対顎咬合面との距離が小さい傾向を示した.なかでも下顎機能咬頭上のAM咬合小面においてその傾向は顕著であった. (2)咀嚼第4相において咀嚼運動路とAMおよびCM咬合小面は約10゜の小さい角度差であったのに対し,ADおよびCD咬合小面に対しては約20〜30゜の角度差であった. (3)終末位に近接した咀嚼第4相において,B咬合小面に対する咀嚼運動路の入射角は,BD咬合小面に対して約30゜,BM咬合小面に対して約40゜であった. (4)咀嚼の第5相においてはBD咬合小面が対顎咬合面と最も近接していた. 以上より,咀嚼の第4相では下顎機能咬頭上のAM咬合小面と上顎のAM咬合小面との間で運動を誘導し,食品の臼磨,咬断により大きく関与していることが推察された.また,食品の圧搾,粉砕および第5相の誘導という点において,BD咬合小面の役割が大きいことが示唆された. 本研究において,咬合接触状態の定量的評価に必要な咬合小面の合理的な分類がなされ,また咀嚼における臼歯部各咬合小面の役割が明確となった.研究成果は咬合接触状態の定量的評価法を確立するための有用な資料となる.
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