研究概要 |
健常者ならびに顎機能障害者を対象として、咀嚼・嚥下ならびにそれらの想起による脳電位周波数マップの変化をもとに,顎口腔系機能と脳波活動とのかかわりを検討した。 咀嚼による皮質活動への影響においては、脳波の周波数トポマップ上に精神心理的安静かつ覚醒が示唆された。一方、食品の口腔内取り込みは、咀嚼の準備に対する精神的集中を示唆する脳波パターンを表出した。 咀嚼時間による皮質活動への影響については、咀嚼時間と脳波トポマップ上に表出されるthetaあるいはdelta成分とのかかわりが示唆された。 食品固さによる皮質活動への影響については、alpha, betaの出現、delta, thetaの消失とかかわりが示唆された。すなわち、食品の固さの増加に応じて皮質活動領域は拡大し、覚醒傾向が示された。 咀嚼の想起によって、リラックスした脳活動様相が示された。一方、嚥下によっては、beta成分の出現により精神的集中が示唆された。また、想起によっては安静が示唆された。 顎機能障害者における咀嚼の皮質活動への影響では、健常者の前頭部で示されるalphaとbetaの上昇、およびthetaの減少は示されず、これらの顎機能異常とのかかわりが推察された。 以上のことから、咀嚼・嚥下ならびにそれらの想起によって賦活される脳の精神心理的活動性は、咀嚼時間、食品性状、さらには顎口腔系機能の健常性とかかわるものと考えられた。
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