研究概要 |
本研究では,内分泌攪乱作用に関して合計51種類の化学物質をin vitroで評価した.その際に,生体内動態に関わりを有する薬物代謝酵素の影響ならびに構造活性相関との関連についても知見を得た.さらに,新規歯科材料を目指して試作し,諸性質を調べた.3種類のin vitroエストロゲン様活性試験(酵母Two-hybrid法,蛍光偏光度法,MCF-7E-screen法)の結果,Bisphenol-A dimethacrylate(Bis-DMA),可塑剤ならびに粘膜調整材でエストロゲン様活性が認められた.また,薬物代謝酵素を導入した系では,ビスフェノールA(BPA),Bis-DMAおよびBis-GMAともに高速液体クロマトグラフィーによつて代謝産物とみられるピークが検出されたのをはじめ,全体的に活性が上昇する傾向が'認められた.一方,ビスフェノールA関連化学物質においてそれらの化学構造とエストロゲン様活性の間に一定の関係を伺わせる結果が明らかとなった.さらに,4,4-Dihydroxybenzophenoneと4,4-dihydroxydiphenyl sulfoneを用いて試作したジメタクリレートは,歯髄細胞に対する細胞毒性試験およびサイトカイン発現量データから,Bis-GMAと比較して,生体適合性が高いことが分かった.このジメタクリレートを用いた,試作コンポジットレジンは,Bis-GMAからなる従来品と同程度のヌープ硬さを示した. 今回の報告は,直接にはin vivoまたは臨床の状況を反映するとはいえない.今後,高分子歯科材料を創製する上から,新たな生物学的懸念である内分泌攪乱作用を呈しない材料候補に関する情報に基づいて,高性能の新材料を研究・開発していけるものと信じる.
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