研究概要 |
プロスタグランジンF2α(PGF2α)は細胞成長因子の一つと考えられている。骨芽細胞のPGF2α刺激による細胞内情報伝達機構の詳細は不明のままである。 われわれは,骨芽細胞のPGF2α刺激による細胞内情報伝達機構を解明する目的で,平成12,13,14年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))を得て,PGF2α刺激によるホスホリパーゼD(PLD)の活性化におけるGTP結合蛋白質(G蛋白質)の役割について骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を用いて検討した。 PLDの活性測定は,[^3H]ミリスチン酸で細胞を標識し,第1級アルコール(ブタノール)存在下でPLD特有のホスファチジル基転移反応によって生じるホスファチジルブタノール([^3H]PtdBut)の放射活性を測定する方法で行った。 1.0.25%ブタノール存在下にPGF2α(1μM)で10分間細胞刺激すると,[^3H]PtdButは未刺激のコントロール(0.18±0.03%)に比べ7倍(1.32±0.05%)の産生量を呈し,PGF2α刺激によるPLDの活性化を認めた。 2.PGF2α刺激によるPLDの活性化に関与するGTP結合蛋白質の役割を検討する目的で,Digitoninを用いて膜透過性を亢進させた細胞で0.25%ブクノール存在下にGTPγS刺激をおこなったところ,PLDの活性は濃度依存的(10μM〜100μM)にまた時間依存的(〜60分)に増加した。GTPγS(20μM)で30分間細胞刺激するとPLDの活性は未刺激のコントロール(0.26±0.30%)に比べ16倍(4.16±0.50%)活性化された。PLDの活性化は,1μMのCa^<2+>,1mMのMg-ATPでも認められた。骨芽細胞においてもGTPγS刺激によるPLDの最大活性化にはCa^<2+>とMg-ATPの存在が必要であった。 3.細胞を百日咳毒素(PT)(100ng/ml)にて12時間前処理したのちGTPγS刺激をおこなったところ,PLDの活性化は阻害されず,PGF2α刺激によるPLDの活性化にはPT非感受性のGq蛋白質を介する経路も関与することが示唆された。
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