研究概要 |
アルシアンブルーとアリザニンによる軟骨・骨分別染色では,上下顎間結紮群は非結紮群に比較して肉眼的には全身的な発育に特に明らかな発育制限は認めなかった。しかし顎関節では下顎頭軟骨と頸部の石灰化骨の境界は不明確となり,幅が広くなっていた。光学顕微鏡的には,増殖層と肥大層に異常石灰化が認められ,それ故あたかも軟骨,骨移行部は不連続であるかに見え,幅も広いと判断された。 基本的に正常な顎関節部の線維芽細胞増殖因子(b-FGF),およびその受容体(FGFR-3)の発現状態を胎児マウス,発育過程にあるマウス,成熟マウスについてウエスタンブロット法で検討すると,b-FGFは15.5日目マウス,胎性17.5日目マウス,生後11日目マウス,いづれにも下顎頭に発現したが,成熟親マウスにはオス,メスともに発現していなかった。FGFR-3についてはすべての時期に発現していたが,胎性15.5日,胎生17.5日目マウスでは著明に発現していた。 免疫組織学的検討では胎児マウスの顎関節最表層部における末分化領域は染色性が低く,その下層において染色性が強くなり,分化とともにb-FGFおよびFGF-3が次第に発現している。成熟マウス顎関節では,免疫染色においてb-FGF, FGFR-3ともに最表層部に染色性が認められるが,より下層の細胞群の染色性は低いか染色性はなかった。即ち軟骨細胞の骨化が行われる部位には,いづれの蛋白分子も何らかの関与が考えられた。
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