研究概要 |
1.正常口腔粘膜におけるHPV16の発現(37%):40歳未満では,11例全例が陰性であったが,40歳以上では,50%の陽性率であった。 2.上皮異形成症におけるHPV16の発現(60%):50歳未満では3/4例が陰性であったが,50歳以上では63%の陽性率であった。本群と口腔扁平上皮癌群との間に発現の有意差が認められた。 3.口腔扁平上皮癌におけるHPV16の発現: (1)原発巣での発現(34%):50歳未満での陽性率は(10%)であったが,50歳以上では51%の陽性率であった。視診上での分類では,白斑型(60%)が潰瘍型(19%)に比較して有意に陽性率が高かったが,他型との有意差はなかった。 (2)転移リンパ節での発現(0%):同一患者の原発巣と転移巣で検索し得た例は,6例であった。原発巣では2/6例が陽性を示したが,転移巣では全例陰性であった。 (3)多発癌例での発現:多発癌では,3/7例の陽性率で,同一患者では時期に関係なく常に陽性であった。また,多発癌が疑われた3例では全例陽性で,これらも時期に関係なく常に陽性であった。 4.HPV18,33の発現:HPV16を検索した組織で検索した。HPV33は検出されなかったが,HPV18は多発癌の2例で検出された。 5.口腔扁平上皮癌由来培養細胞におけるHPV16,18,33の発現:検索した全9株で,どのタイプのHPVも検出されなかった。 6.HPV16陽性の癌では,陰性例と比較して有意にcyclin D1の発現が低下していた。また,HPV16陽性の白板症でも同様の傾向が見られた。しかし,他の細胞周期調節因子とHPV16発現との相関性は認められなかった。
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