研究概要 |
細胞毒と考えられてきた抗癌剤が免疫賦活作用を発揮する事を証明し、口腔癌患者の抗腫瘍免疫能を増強させる抗癌剤投与法を確立するため、初年度は健常人由来末梢血単核球(PBMC)にて、5-FUおよびCDDPが抗腫瘍効果に重要なTh1タイプサイトカイン誘導活性を有する事を証明した。本年度は口腔癌患者由来PBMCにて5-FU及びCDDPがTh1サイトカインを誘導するか否か検討した。in vitroにて治療後経過良好な口腔癌患者由来PBMCを5-FUあるいはCDDPで刺激した時、健常人と同程度のTh1サイトカイン誘導活性を示した。未治療の口腔癌患者由来PBMCを5-FUあるいはCDPPで処理した時は、健常人や治療後経過良好患者のレベルには達しないものの、有意にIFN-γ,TNF-α,TNF-β,IL-12およびIL-18を誘導し、PBMCの癌細胞障害活性も増強させた。サイトカイン及びキラー細胞誘導活性はPBMCを抗asialo GM1抗体と補体で前処理しNK細胞を除去する事により抑制された。抗CD3抗体と補体によるT細胞除去ではほとんど影響を受けなかった。5-FU及びCDDPによるサイトカインならびにキラー細胞誘導活性には、T細胞ではなくNK細胞が重要な役割を演じている事が明らかとなった。CDDP投与された口腔癌患者より、投与前ならびに投与24時間後の血清中サイトカインの検索にて、5症例中5例でIFN-γ、4例でTNF-α、4例でTNF-β、4例でIL-12そして5例でIL-18値の上昇が認められた。5例中4例でNK細胞活性の上昇も認められた。以上より抗癌剤が宿主免疫能を増強させ、この事が抗癌剤の抗腫瘍効果において極めて重要である事が示唆された。今後さらに検討を進め、副作用がなく、免疫能を増強させサイトカインバランスをTh1優位に偏位させる抗癌剤投与のプロトコール確立を目指す。
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