研究概要 |
腫瘍細胞の浸潤・転移と微小循環系の新生と構築,特にリンパ管網との関係を明らかにする目的で,ハムスター誘発舌癌を作成して組織化学的に検索した.【材料と方法】実験動物には生後8週(体重110〜120g)の雄性ゴールデンハムスターを用いた.発癌操作としてエーテル麻酔下に舌を歯科用クレンザー(抜髄針)で擦過,10-dimethyl-1,2-benzanthracene(DMBA)を塗布した.一定期間後,採取した舌組織を微小脈管の5'-nucleotidase(5'-Nase), alkaline phosphatase (ALPase)などの酵素組織化学染色し光顕・電顕観察を行った.さらに脈管内皮細胞増殖因子などの免疫組織化学染色を行い光顕観察した.同様にリンパ節も調べた.【結果と考察】実験開始後,12〜16週より実験群の舌に種々の段階の腫瘍形成がみられた.光顕およびSEM反射電子像で腫瘍と健常部の境界領域の組織内に管腔の拡大した5'-Nase反応陽性リンパ管が認められた.これら腫瘍細胞周囲のリンパ管内皮細胞の5'-Nase活性はTEMでも確認された.TEM観察では腫瘍細胞は類円形または不整型な核をもち,また細胞質内に豊富なトノフィラメントが観察された.また,VEGF-CのレセプターであるFlt-4の発現が5'-Nase陽性リンパ管にみられ,腫瘍周囲結合組織内でのリンパ管新生が示唆された.リンパ節転移ついては,頚部リンパ節をHE染色ならびにKeratin等免疫組織染色し検索したが,転移は明かでなかった.
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