研究概要 |
サイトケラチン19フラグメントは有用な癌の腫瘍マーカーとして期待されており,臨床的検討が報告されつつある.われわれはこれまでに口腔癌症例を対象として,血清サイトケラチン19フラグメントの測定を行い,早期癌の診断,進行の判定,治療効果の判定に有用であることをあきらかにしてきた.この研究により,口腔癌の多くを占める扁平上皮癌に関しては,これまで最も優れた腫瘍マーカーとされてきたSCC抗原より感度および特異度が高く,腫瘍マーカーとして優れているものと考えられた.本研究は,この優れた腫瘍マーカーである血清サイトケラチン19フラグメントの半減期の測定により,治療後の口腔癌の再発予測が可能であるかの検討を行うことを目的として研究を進めた. 今回の調査結果では経過良好群と経過不良群との間には平均の推定半減期で経過良好群が経過不良群よりやや短い傾向が見られたが,統計学的な有意差は認められなかった.また,経過良好群,経過不良群ともに標準偏差が大きく非常にばらつきの大きな結果となった.したがって,これらの結果から,血清サイトケラチン19フラグメントの推定半減期の測定により口腔癌の予後の予測を行うことは非常に困難であった. しかしながら,血清サイトケラチン19フラグメント値の平均の推定半減期が経過良好群で経過不良群よりやや短い傾向がみられたことは,推定半減期が口腔癌の術後の経過予測に有用であることを示唆するものであると考えられる.
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