研究概要 |
先天性頭蓋顎顔面疾患は,頭部および顔面の形態的な異常を伴う病態で,多くの疾患や症候群に起因し,その中でFGFR遺伝子ファミリーの異常としてCrouzon症候群,Apert症候群などが報告されている.しかし同一遺伝子(FGFR2)の原因による先天性頭蓋顎顔面疾患であっても,また同一疾患であっても,その表現形として臨床症状は重症例から軽症例まで様々である.これは細胞レベルの生物学的活性の変化と関連遺伝子の関与とが考えらる.細胞レベルの生物学的活性の変化に関しては頭蓋顎顔面疾患患者より培養された骨髄間葉系細胞の生物学的活性を解析した.<実験方法>Apert症候群患者の骨細胞と、コントロールとして下顎前突患者の細胞を使用し,各細胞に対してリガンドであるb-FGFを投与し一定期間培養後に、骨細胞マーカーのひとつであるアルカリフォスファターゼの活性を測定するとともに、石灰化の指標としてカルシウム濃度を測定した。<結果>正常(下顎前突)細胞ではFGF投与によりアルカリフォスファターゼの活性および石灰化(カルシウム濃度)は抑制されたが、Apert症候群患者の細胞ではFGFによる抑制は認められなかった。これにより、Apert症候群患者においてはFGFRの遺伝子変異により、未分化間葉系細胞(骨芽細胞)の骨分化がリカンドであるFGFによる抑制を受けず、健常者に比較しすすんでしまう可能性が示唆された。これは臨床症状である頭蓋骨早期癒合症の発生原因の、ひとつの要因であると考えられた.また関連遺伝子の関与では,Apert症候群患者の手の形成遺伝子とコントロール群のそれとをallele検索を行った。<結果>Apert症候群患者では関連遺伝子の関与の可能性が示唆された.今後もさらに研究を続ける予定である.尚,以上の研究は当大学倫理委員会にて許可された様式に基づきインフォームドコンセントを得て行っている.
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