研究概要 |
本研究ではcaspinの生理的機能解析を進めるべく,ヒトおよびマウスrecombinant caspin (rhCaspin, rmCaspin)の作成を試みその精製方法を確立した.caspinの血管新生に対する抑制作用の分子機序を明らかにすべく,ラット大動脈を用いたex vivo血管新生モデルと培養血管内皮細胞HMEC-1(SV-40 transfected Human Microvascular Endothelial Cell)を用いたin vitro管腔形成アッセイ法による検討を行い,caspinが濃度依存性に血管新生を抑制することを確認にした.また,各種培養細胞株を用いた詳細な解析によって,caspinが血管内皮細胞に特異的な細胞死を引き起こすことを見出し,DNA断片化,GFP標識annexin V染色によるapoptosis初期の細胞膜飜転とcaspase3酵素活性の上昇の確認によって,血管内皮細胞に特異的なapoptosisであることを明らかにした.以上の結果からcaspin/PEDF/EPC-1によるin vitro抗腫瘍効果と血管新生抑制効果の分子機序は血管内皮細胞特異的なapoptosis誘導に起因していることが明らかとなった.また,マウス未分化培養細胞株ATDC5細胞株を用いて,caspinの骨軟骨組織形成機序における生理的意義や骨軟骨関節疾患における動態の詳細な解析を進めつつあり,骨軟骨組織形成期においてcaspinが特異的な時期において発現が増減することを確認した.今後はcaspinの血管内皮細胞特異的なapoptosis誘導の分子機序の検討,骨軟骨組織形成におけるcaspinの機能解析,さらに血管新生抑制による各種疾患の治療への臨床応用を目指した研究も試みる予定である.
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