| 研究概要 |
顎関節鏡視下での電気メスによる創傷後の顎関節腔内の硬軟両組織の組織反応についてはヒトにおける手術後のエックス線的および臨床的経過から,推測しているにすぎなかった.ヒツジ顎関節は関節の大きさと構造の点においてヒト顎関節と類似しており,Gossら報告から疾患モデルとしての有用性が指摘されている.そこで,開発した手術用チャンネル付細径顎関節鏡下で電気メスによる顎関節鏡視下手術を施行し,平成12年度は術中鏡視所見と術後2,4,8,12週の剖検所見,レントゲン所見および組織学的所見の対比を行った.本年度はさらに同時に採取した関節滑液について,その成分であるグリコサミノグリカンの分解酵素であるストロメライシン(MMP-3)の推移について,カゼインザイモグラフィーでMMP-3の検出を,蛍光修飾基質を用いて酵素活性の測定を行い,エックス線的および臨床的所見からしか推察できなかった鏡視下手術後の顎関節における硬軟両組織の治癒過程を解明することを目的に本研究を計画した.術後2週から12週までのすべての実験群にMMP-3を検出したが,術前滑液試料および対照群ではいずれも存在を認めなかった.MMP-3は非活性型の前駆体として分泌され,活性化を受けて蛋白質分解能を発揮するが,TIMPによる活性阻害を受けることが知られている.そこで,MMP-3の酵素活性の測定を行ったところ,いずれの試料も活性を示さなかった.したがって,ザイモグラフィーで認めた実験群のMMP-3はそのほとんどが前駆体かTIMP複合体の不活性な形で存在するものと考えられた.
|
