研究概要 |
当初予定していたAP2a, fkh6,TCF1,Sna, Sp4,の5種の遺伝子に関してはin situ hybridization法において良好な遺伝子発現が得られず、新たな遺伝子Embryo Brain Kinase(以下:Ebk)をターゲットとした。胎生12日(E12)からE16のC57BL6Jマウス歯胚の組織切片を作製し、non-radioactiveのRNAブローブを用いたin situ hybridization法を用いてEbkの発現バターンを検索した。第一臼歯歯胚および切歯歯胚を取り巻く間葉組織にEbkの強い発現がみられた。第一臼歯歯胚においてはE12からE15にかけて歯胚の舌側の間葉組織に発現し、E16では歯乳頭に強い発現が認められた。また一次口蓋、舌、口唇の間葉組織にも強い発現が認められた。歯胚および口腔の上皮にはEbkの発現は認められなかった。これらの結果よりEbk遺伝子がマウス歯胚発生に関与していることが示唆された。統いて、マウス歯胚培養において、Ebk遺伝子の発現をアンチセンスオリゴヌクレオチドで阻害し、Ebk遺伝子の機能を検索した。Ebk遺伝子の開始コドン(ATG)を含めた20塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製した。C57BL6JのE11.5マウス胚から第一臼歯胚と周囲組織を採取し、5%CO2,37℃にて培養した。コントロール群では培養液にセンスオリゴヌクレオチドを、実験群ではアンチセンスオリゴヌクレオチドを30μm加え歯胚におけるEbk遺伝子のmRNA合成を阻害した状態で7日間培養した。コントロール群では、マウス歯胚は鐘状期に類似した形態まで発育し、上皮の伸張と、エナメル器に類似した組織が認められるまで発育した。しかし実験群では、上皮の間葉組織への伸張はわずかで、歯胚の発育は蕾状期初期で停止していた。Ebk遺伝子の発現を阻害したことで、歯胚が発育しないという結果より、Ebkが歯胚発育に重要な役割を演じていることが示唆された。Ebk遺伝子の上皮間葉相互作用における役割はtissue recombinationで解析中である。
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