第3臼歯欠如を高率に有するELマウスと欠如がみられないMSMマウスとの交配実験から得られたF2マウスを用い、第3臼歯欠如を1つの表現型とした連鎖解析からマウス染色体3番上のD3Mit141(33.9cM)からD3Mit290(44.8cM)の領域で強い連鎖結果(X^2=22.8、p<0.0001)が得られた。Lef1、Egf、CSF-1は歯の発生に深く関わる遺伝子であり、本実験で得られた候補領域に存在することから、これらの遺伝子が第3臼歯欠如の候補遺伝子と考えられた。ELマウスの歯の発生メカニズムを解明するため組織学的検討を加えたところ、生後3日目でELマウスは正常マウスに比較し第3臼歯歯胚の発育が遅れ、その後bell stageに進むことなく歯胚が消失した。これらの観察結果からELマウスでみられる第3臼歯の欠如は歯胚の初期発育段階で発生が停止しアポトーシスにより除去された可能性が高い。すなわち、歯胚の初期の発育に重要な役割を演ずるLeflとEgf遺伝子は歯胚のアポトーシスと深く関わることが報告されていることから、ELマウス第3臼歯歯胚におけるLefl遺伝子の発現部位ならびに時期を検討したところ、正常マウスと比較し明らかな違いは認められなかった。現在、Egf遺伝子に注目し遺伝子発現レベルを検討している。 また、ELとDDYマウスとの交配実験から原因遺伝子の存在する候補染色体の特定を行ったところ染色体13番のD13Mit78およびD13Mit35(59cM)で高い連鎖(X^2=11.8、p<0.01)が得られた。以上の結果からELマウスの第3臼歯欠如にはアポトーシスが関与し、その中心的役割を演ずる遺伝子は染色体3番上に存在する可能性が強く示唆された。
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