研究概要 |
看護・介護のための口腔保健プログラム作成に必要な基礎データとなる口腔保健状況,口腔環境を経年的に診査し,口腔保健管理を行っていくにあたって必要と思われる身体状況に関する調査を行うとともに,看護・介護者のための口腔保健プログラム作成の基礎資料を作成することを目的に本研究を行った。調査対象は障害児(者)施設に入所者および,当施設において医療,療育ならびに機能訓練のために通院・通所している在宅障害児(者)である。口腔診査は被検者を視診型診査法にて実施し,歯牙の状況については健全歯,処置歯,未処置歯,喪失歯別に診査した。なお,う蝕検出基準はWHOの基準に従って行った。歯周疾患についてはPMA IndexとGingival Index(GI)で,歯口清掃状況についてはOral Hygiene Index-Symplifide(OHI-S)とPlaque Index(PII)で評価した。その他の口腔諸状況としては,軟組織疾患の有無,咬合状態,舌苔の付着状況,口蓋および口腔前庭部の汚れの有無,頬部・口唇の緊張の有無,舌の動き,開口状態維持の状態,口腔・口唇の乾燥状態について診査し,さらに抑制の困難度,首の安定性,体位の状態,嘔吐反射の有無,移動の状態についても調査した。そしてこれら診査項目を総合的に判断して,被検者とのコミュニケーションの困難性,口腔保健管理の難易度について評価した。 その結果,口腔保健状況に関して,う蝕状況には大きな変化はみられず,歯周疾患状況ではPMA-I値,GI値は各年齢階級とも高値になる傾向を示した。歯口清掃状況については大きな変化はなかった。また,両調査のPMA-I, GI, OHI-S, PIIの関連性をしらべたところ,各診査項目間に有意な相関があった。歯肉増殖の有無とPMA-I, GIとの関連性では,歯肉増殖のある者の方がPMA-I, GIとも有意に高かったが管理後では有意差は認められなくなった。また,長期にわたる障害児(者)う蝕の評価法について分析,検討したところ,う蝕有病(D者率)で表すことが適切であることがわかった。
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