研究概要 |
1.GCF,唾液中のヒトラクトフェリン(hLf)定量 15人の被験者から採取したGCFおよび7人の被験者から採取した唾液についてhLf量を測定した結果,GCFでは平均226μg/ml,唾液では平均20μg/mlとGCF中のhLf量は有意に高かった。 2.歯根面におけるhLf分布状態の観察 ウサギ抗hLf IgGを使った免疫染色により,歯石が認められた部位には強い蛍光が認められた。被験歯の歯根を表層から歯髄腔までが3層となるように切削してhLf量を測定した結果,歯石が付着している部位では第1層から第3層に向かうにつれてhLf量が減少していた。また,歯石付着部位の第1層に含まれるhLf量は歯石非付着部位の第1層に比べて有意に高かった。さらに,歯石付着部位,歯石非付着部位とも第1層から第3層に向かうにつれてエンドトキシン活性が減少していた。 3.歯肉縁上,縁下プラーク中のhLf定量 19人の被験者から採取した歯肉縁上・縁下プラーク中のhLf量を測定した結果,縁上プラーク中hLf量の平均は3.27μg/ml,縁下プラーク中hLf量の平均は2.06μg/mlであり,対応のあるt検定で解析したところ統計学的な有意差は認められなかった。しかし,両者間には有意な相関関係が認められた(相関係数0.609,p<0.01)。 4.hLfがA. actinomycetemcomitans感染ヒト単球系細胞の細胞死に与える影響 THP-1細胞にA. actinomycetemcomitansを感染させ24時間後,感染群では対照群に比べてTNF-α産生量が有意に増加した。これにhLfを添加するとTNF-α産生量は有意に減少した。また,感染群では細胞内DNA断片化が対照群に比べて有意に亢進したが,hLf(100μg/ml)を感染操作前後に添加すると対照群と同程度まで断片化が抑制された。
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