研究概要 |
1.腹腔投与マウスモデル系における接着分子発現およびサイトカイン産生:歯周病原性細菌腹腔投与免疫マウスモデルにおいては、早期より腹膜の血管内皮細胞にCD62eおよびCD62pが高度に発現しており、腹腔局所への好中球浸潤との間に相関関係が認められた。また、腹腔局所のTNFα産生は、歯周病原性細菌投与2時間後をピークとした一過性発現をしめしたが、IL-1,IL-6においては12時間をピークとした即時層と3-4日をピークとした遅発層が認められた。 2.歯肉溝内縁上皮の接着分子の発現について:インフォームドコンセントの得られた歯周炎患者より歯周外科手術時に採取した歯肉材料を用いて、凍結切片による組織免疫化学法および器官培養系によるインテグリンのair-liquid interface cultureを行いin vivoおよびin vitroにおける接着分子の発現状況を検討した。その結果、in vivoおよびin vitro双方において、歯肉溝内縁上皮には、ICAM-1が構成的に発現していることを認め、これが、好中球に対するカウンターレセプターの最有力候補であることが考えられる。一方、CD62e,CD62等セレクチンの発現は認められなかったが、α6β1インテグリンの発現を認めた。 3.歯肉溝内緯上皮と好中球の相互作用について:器官培養系を応用した好中球-上皮細胞共培養系における細胞傷害性の実験から、歯周病原性細菌貪食依存性に好中球は、有意に高い活性酸素、エラスターゼ、TNFα、MMP-8および9を放出し、歯肉上皮細胞を傷害することが示された。これらの各要素を個別に阻害しても有意な抑制効果は認められず、複合的な好中球由来傷害因子が歯肉上皮細胞の傷害性に関与していることが考えられた。この好中球の歯肉上皮細胞に対する傷害性は、歯周病原性細菌の種類によって有意な差異は認められなかった。
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