研究概要 |
歯周病の発症と進行に細菌感染が深く関与していることが,これまでの細菌学的および免疫学的研究によって明らかにされてきた.これらの細菌の構成成分であるリポ多糖や莢膜多糖抗原は,炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン-1(IL-1)の産生に関与し,さらにこのIL-1が様々な生物学的活性を示し,歯周病,リウマチなどの炎症性骨吸収をも起こすことが明らかとなった. そこでこれまで我々は,歯肉溝浸出液(GCF)中のIL-1を測定し,臨床所見との関連性について調べた.その結果,GCF中のIL-1は歯周炎が重症になるに従い,その検出量が増加することを明らかにした.しかし,GCF中のIL-1量を治療の前後で調べたところ,IL-1αは歯肉の炎症が消退するに従い,検出量が低下したのに対し,IL-1βは歯肉の炎症が消退したにもかかわらず,その検出量が変化しない場合が多く認められた. したがって本研究はこれらの事実をもとにして,歯周組織におけるIL-1の局在がIL-1αとIL-1βの間において,違いがあるのではないかと考えIL-1の局在を免疫組織学的手法により検索を行った.その結果, 1.GCFサンプルを早期発症型歯周炎患者と成人性歯周炎患者から採取し,GCF中のIL-1を調べたところ,早期発症型歯周炎患者では成人性歯周炎患者に比べIL-1βが高かった. 2.IL-1αに関しては両群とも同程度であった.免疫染色の結果からもIL-1αが上皮に多数陽性細胞が認められたことからIL-1αは歯肉の炎症に関係していることが示唆された. 3.IL-1raは早期発症型歯周炎患者よりも成人性歯周炎患者のGCF中に多く認められたことから,歯周炎の活性度をIL-1α,IL-1βとIL-1raの比率であるIL-1活性度で両群を比較した場合,早期発症型歯周炎患者の方が成人性歯周炎患者に較べ有意にIL-1活性度が高かった(P<0.01) 以上のことから,IL-1活性度を調べることにより歯周病の病態の違いを把握できる可能性が示唆された.
|