研究概要 |
Martinelline類合成の基本戦略とした我々が開発した光学活性ホスフィン配位子9-PBNを用いる分子内アリル位置換反応により光学活性体2-テトラヒドロキノリン環合成を試みたところ、最高94%eeの光学純度で目的物が得られることが明らかとなった。そこでヒドロキシアントラニル酸を原料とし基本骨格となるピロロキノリン環の構築法の検討を行った。まず、アリルオキシクロロジフェニルシラン試薬を利用したシリル基を足がかりとする分子内閉環メタセシス反応やアセトキシクロチルスタナンを用いる位置選択的クロチル化反応によりテトラヒドロキノリン環前駆体の合成法を確立し9-PBNによる分子内不斉アリル位置換反応を行い、収率42%、60%eeで目的物を得ることができることを確認した。実際の合成法には直接的かつ短工程で合成可能な位置選択的クロチル化反応を採用した。得られたテトラヒドロキノリン環3位への側鎖導入は、Mannich反応、続くニトリル基の立体選択的な1,4-付加反応により達成された。次にRaney-Niを用いるシアノ基の還元、続くアミンの分子内還元的アルキル化により立体選択的なピロロキノリン環の構築に成功した。また、テトラヒドロキノリン環2位側鎖延長についてはヒドロホウ素化反応等によりその方法論を確立した。分子内アリル位置換反応での合成ルートは確立できこれによりMartinellineの合成が達成できると考えている。これとは別により効率的な合成法の開発ということで新たにMichael-Aldol反応によるテトラヒドロキノリン環の構築を検討もあわせて進めた。テトラヒドロキノリン環2位の側鎖をあらかじめ導入した基質を用いることで先のルートを大幅に改善でき、しかもその反応は相間移動触媒が使用可能で効率の良い反応であった。この方法を先のルートに一致させることでラセミ体ではあるが、必要な官能基がそろったMartinelline前駆体の合成が達成できた。また,このMichael-Aldol反応によりテトラヒドロキノリン環の一般的合成法が確立することができた。
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