研究概要 |
海綿より単離されたアデニンジテルペン系アルカロイドasmarine A-Fの合成とそれらの構造および絶対配置を決定することを目的として研究を開始し,以下の成果を得た. 1.コバルト錯体共存下,6-chloropurineとN-(3-bromopropyl)-N-(methoxymethoxy)carbamic acid allyl esterの反応で7位アルキル体が優先して生成し,さらに6位での分子内アミノ化反応を経て,asmarine A,Bの複素環部分に相当する[1,4]diazepino[1,2,3-gh]purine骨格を有するヒドロキシルアミン体を合成した. 2.6-Chloro-7,9-dihydro-9-methyl-8H-purin-8-oneの7位をN-(3-bromopropyl)carbamic acid tert-butyl esterとN-(3-bromopropyl)-N-methoxycarbamic acid tert-butyl esterでそれぞれアルキル化後6位での閉環を経て,asmarine C,Dとasmarine E,Fの複素環部分にそれぞれ相当するアミン体とメトキシアミン体を合成した. 3.Asmarine A,D,Eのジテルペン部分を構成するトランスデカリン体合成のため,不斉Robinson環化により得た(4aR)-(-)-1,4a-dimethyl-4,4a,7,8-tetrahydronaphthalene-2,5(3H,6H)-dioneを用いて,Li/NH_3還元,シリルエノールエーテル体へのヒドロキシメチル化,イリジウム触媒を利用する接触還元などの高立体選択的変換法を経てトランスデカリン環上の全ての立体化学が天然品のそれらと一致する(4'aR,5'S,6'R,8'aR)-octahydro-5',6',8'a-trimethylspiro[1,3-dioxol-ane-2,1'(2'H)-naphthalene]-5'-carboxaldehydeを得た. 今後,対応するシスデカリン体の合成と側鎖の変換により2種のジテルペン部分を構築し,さらに複素環部分の導入を経て,本研究の目的を達成する計画である.
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