研究概要 |
見出しの数字は、12,13年度補助金交付申請書の研究実施計画に記した項目と同じである。1)狩蜂毒嚢成分の研究は、ピタミンD研究の競争が世界的に激化してきたので、(2)の研究を優先させ、一時休止した。従って、12,13年度の成果はない。 2)i)天然ホルモン1α,25-(OH)_2D_3のA環の2位にメチル基を導入するというシンプルな構造変化で、全8種のA環ジアテオマー全てを体系的に合成し、A環のコンホメーションを含む様々な構造因子とVDR(ビタミンDレセプター)結合能を指標とするCa代謝調節能、HL-60細胞分化誘導能などのビタミンD活性との関係を究明した。天然ホルモンより強いVDR結合能を有する2α-メチル体の発見、従来の仮説"A環配座がβ-配座型が作用発現に寄与している"はコンホメーション解析だけでは支持できない等、多くの重要な知見を得た[論文6,8]。更に、これら化合物の転写活性とアポトーシス誘導能を調べ、作用発現の構造モチーフを明らかにした[論文11,13]。また、2α-メチル基のVDR結合能増強効果を分子力学計算によるドッキングスタデイにより推定した。A環前駆体合成の際生じる1,3-ジオールの絶対配置を決定する新しい経験則を開発した[論文1]。これらの研究を基盤として、ii)2α位の置換基効果を嵩高さ、水素結合、柔軟性などから究明するため、2α-alkyl、2α-(ω-hydroxyalkyl)、及び2α-(ω-hydroxyalkoxy)-1α,25-(OH)_2D_3誘導体を糖から立体選択的に合成し、ビタミンD活性を調べ、その中からVDR結合能が天然ホルモンより強いものが3種発見し、また、Ca代謝調節能が今までに無く異常に強いものが発見され、これらの作用の研究が進行中である[論文9,10].また、VDR結合能の増強効果を分子力学計算によるドッキングスタデイにより推定した[論文2]。iii)DeLucaらの作用分離による抗癌剤開発を目指している19-nor活性型ビタミンDのユニークな活性プロフィルと関連して、8種の5,6-trans-2-methyl-1,25-(OH)_2D_3のA環ジアステレオマーを合成し、VDR結合能とHL-60細胞分化誘導能との構造活性相関を調べた。また、VDRへのドッキングスタデイを通じて、2α-メチル基の結合能増強効果をより鮮明に結論した[論文3]。iv)2α-Me-1α,25-(OH)_2-D_3の側鎖を今まで知られているVDR結合能、VD活性の強い20-epi誘導体、Mc-1288やKH1050の側鎖に代えて活性増強効果を調べた。VDR結合能は前者では相加的に12倍に達したが、後者では予想を下回る結果となった[論文7,8]。v)腫瘍細胞での天然ホルモンの代謝は組織依存的に3位水酸基が異性化することが判った。2α-置換体で3-位エピメリ化の意義を解明中である[論文5]。 3)活性型ビタミンDの収束型合成法として、フランスルホレンからA環前駆体の合成ルートを開発した[論文4]。
|