研究概要 |
新しい抗腫瘍性物質の発見を目的として,種々の海洋生物より分離した菌類から抗腫瘍またはがん細胞増殖抑制を示す化合物を探索すると共に抗腫瘍性物質ジムナスタチンIの構造活性相関を検討した. 1.新規物質の単離と構造決定 (1)海洋生物由来菌類から25種の新規物質を単離し,これらの化学構造を決定した.即ち,ダイダイイソカイメン由来ジムナセラ属真菌から11種(ジムナスタチンL-N及びP-U,ジムナステロンG並びにダンカステロンB),沖縄産クロナマコ由来放線菌(未同定)から3種(ハロデライドA-C),沖縄産ラッパウニ由来アスペルギルス属真菌から2種(ピレオチンA及びB),ムラサキウニ由来アスペルギルス属真菌から2種(アンソカラリンG及びH),緑藻ポウアオノリ由来ペニシリウム属真菌から5種(ペノカラシンD-H),アメフラシ由来ペリコニア属真菌から1種(セコマクロスフェライドE)並びに海水魚ヤナギベラ由来ストレプトマイセス属放線菌から1種(ハリコブレライドA)を単離した. (2)立体化学未定であったマクロスフェライドC及びF-Hの絶対立体構造を決定した. 2.生物活性 (1)上記物質はジムナスタチンL-N及びセコマクロスフェライドEを除き,細胞増殖抑制を示した. (2)ハリコブレライドA並びにすでに単離されていたレプトシンM及びジムナスタチンIは,ヒトがん細胞に対し強い増殖阻害活性を示すとともに新規作用機作をもつ可能性が示唆された.また,レプトシンMは,プロテインキナーゼ及びトポイソメラーゼに対し阻害活性を,ジムナスタチンIは,プロテインキナーゼ及びチューブリン阻害活性を示した. (3)マクロスフェライドE-H及びL並びにこれらの2種の誘導体は,血管内皮細胞(HUVEC)に対する癌細胞(HL-60)の接着を阻害した. 3.数多くのジムナスタチン類縁体を合成し,がん細胞に対する細胞増殖阻害活性,チューブリン阻害活性及びプロテインキナーゼ阻害活性に関する構造活性相関を明らかにした.
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