研究概要 |
創薬研究において,これまでリード化合物の探索は主に単一成分のみについての研究が行われ,複数成分の組み合わせからなるリード化合物に対する検討はほとんどなされたいなかった.そこで,生体成分であるアミノ酸,単糖類および核酸塩基などを構成成分とする天然由来のハイブリッド型生体低分子を医薬品のリード化合物として選び,まず単純で効率的な選択的合成反応を確立し,それらの全合成と大量供給法を開発するため本年度は以下の検討を行った. ハイブリッド型生体成分に多くみられるアミノ酸部及び糖部のエナンチオ選択的合成法の開発のための基礎的研究を行った.有機溶媒中で不可能であったラジカル反応が水中で進行する例が最近見いだされていることから,炭素-ヘテロ原子多重結合としてオキシムエーテル類およびヒドラゾン類への水中ラジカル付加反応も検討した.その結果、これまで水中では不安定とされていたイミン類へのアルキルラジカル付加反応が速やかに進行し、炭素-炭素結合の新規形成反応が開発できた。さらに、これらの結果に基づいて、ハイプリッド型生体低分子のアミノ酸部の効率的合成を行った。すなわち、グリオキシ酸から容易に調製できるオキシムエーテル類,ヒドラゾン類などの基質についてラジカル反応をワンポットで行い,アミノ酸合成反応の単純化と効率化を実現した. さらに、安価で入手しやすい天然糖から,保護基を用いないラジカル付加閉環反応により糖部を構築する合成法の開発の基礎的検討として、カルボニル基とオキシムエーテル基を同一分子内に有する基質のラジカル反応を検討した結果,高収率で環状アミノアルコールが得られることを確立した.また、オキシムエーテルの1,2-Wittig転位反応を応用した糖部の構築法についても成果を得た。
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