研究概要 |
(1)薬物分子の重ね合せプログラム(SUPERPOSE)の改良およひ計算時間の短縮は、PowerPCG4(MPC7400)を搭載したMacintosh(PowerMacG4 500MHz/256MB)の購入によりその目的を果たした。 (2)NOESYおよびROESY測定、結合薬物の配座解析およびFlexi Dock法による薬物の複合体モデル構築は、サイトI結合薬物であるブメタニド、インドメタシンなどにS-およびR-ワルファリン(ラセミ体よりそれぞれを分取)を追加、また、サイトII結合薬物であるトルメチン、S-およびR-イブプロフニンなどに加えてS-およびR-ケトプロフェン、ダンシル-L-メチオニンなどを追加して実施した。さらに構築したBMT354-サイトIおよびTLM53-サイトI複合体モデルの水溶液中における分子動力学計算によるモデル構造の精密化を実施した。 I)薬物の追加による結合薬物の配座解析は、サイトI結合薬物では複数の負のポテンシャル部分(HA)、疎水的構造(HP)が存在し、その距離関係はHA1-HP1が約4Å、HA2-HP1が約4Å、HP1+HP2が約6ÅおよびHA1-HP2が約10..5Åの基本構造を取ることが示唆された。一方、サイトII結合薬物でも、HAと複数のHPが存在しその距離関係は、HA-HP1が約4〜5Å、HP1-HP2が約6〜7ÅおよびHA-HP2が約10〜12Åの基本構造を取ると考えられた。 II)複合体モデルの構築は決定した各サイトの結合薬物の配座とHSA単独のX線解析データとのドッキングをFlexi Dock法(当教室所有のSYBYL Ver6.7:Tripos社)により行った。HSAのサイトIに結合する薬物はLYS199,ARG222などの塩基性アミノ酸と薬物の負のポテンシャル部分との水素結合ならびに静電的相互作用が、また、薬物のベンゼン環(HP)などの疎水部分がPHE211,TRP214,LEU219,PHE223,LEU238,ILE264,LEU276およびLEU290などの疎水アミノ酸で構成された領域にフィットすることが示唆された。一方、サイトIIこ結合する薬物は、負のポテンシャル部分(カルボキシル基(HA)など)はARG410,TYR411,ARG485などの塩基性アミノ酸との静電相互作用が考えられた。さらに、薬物の疎水部分(ベンゼン環(HP)など)がVAL415,LEU423,LEU460およびPHE488などと相互作用することが示唆された。 III)構築したモデル(BM1354-サイトIおよびTLM53-サイトII複合体)の水溶液中(水分子の付加)における分子動力学シミューレション(300ps程度)を行い精密化を実施した結果、各サイトに結合する薬物は、(2)-II)および(2)-II)で示した相互作用(水素、静電および疎水)が水溶液中でも反映されていることが示唆された。
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