研究概要 |
ペプチド医薬品の特殊放出制御による生体への送達効率の向上を目的として,その基礎となる下記3タイプの放出モードを考案し,特にペプチド医薬品の安定性確保や数千〜数万に達する高分子量薬物の透過を可能にするためのハイドロゲルを中心とした数種の新しい素材,特殊放出を可能にする粒子構造の基本設計コンセプトとその気中懸濁被覆法によるマイクロカプセル(MC)製造技術に関する研究を進めた。 1)長時間遅延放出MC: 乳糖核粒子・薬物被覆層・Poly(ethyl acrylate-methyl methacrylate-2-hydroxyethyl methacrylate)放出制御膜からなるMCは,分子量数万の高分子量水溶性薬物に対して,数時間にわたるラグタイムとその後の早い放出で特徴付けられる長時間遅延放出を可能とした。また,デリケートな物性を持つペプチド医薬品に対してもそれを安定に封入でき,かつ所望の機能を発揮する製剤処方と流動層プロセスを構築できた。さらに,in vitroでの放出特性とin vivoでの経口投与後の薬物吸収動態には比較的良好な相関が認められた。 2)周期的パルス放出制御型MC: PEGをグラフト化したP(N-isopropylacrylamide(NIMAAm))ナノ粒子は,加熱・せん断操作を伴う流動層プロセスによるMC化に際して危惧されるペプチドの分解に対して,高含量のペプチドを安定に保持可能とする素材であった。Poly(ε-caprolactone(PCL))擬ラテックスは放出制御膜剤として使用可能なものとなるにはいたっていない。処方検討を継続し,最終的には,ペプチド含有PEGグラフト化P(NIMAAm)ナノ粒子とPCLの交互多層膜の構築などによって周期的パルス放出モードを有するMCの開発を目指したい。 3)刺激応答性放出制御型MC: 温度応答性P(NIPAAm)ナノゲル粒子を含む被膜の構築によって,分子量千〜数千の水溶性薬物に対して,高温で放出生起・低温で放出停止を示す温度応答性放出モードを実現できた。ミクロサイズのデバイスであるがゆえに,温度変化に伴う放出速度変化はわずか数秒レベルで起こり,従来のマクロデバイスに比べて,はるかに鋭敏な放出レスポンスであった。
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